ニッポンの小さな旅へ。 【徳島・上勝】ゴミゼロの町で、おしゃれなアドレスを巡る。

日本いち美しいゴミ捨て場を中心として、2020年5月30日、ゴミゼロ（530）の日に官民共同でオープンした、徳島県勝浦郡上勝町にあるエコな複合施設ワイ。小さなホテル棟のほか、交流ホールや企業研修などを行うラボラトリーを設け、町内外の人々がゼロ・ウェイストの取り組みについて学んだり体験できるようにした。こうした努力の末、上勝町は再資源化率80%を達成。いまでは国内外から多くの人が視察やゴミゼロ体験に訪れる。コンビニすらない四国いち小さな町が、エコタウンの先駆けとして、世界に新しいライフスタイルを発信しているのだ。そんなワイからスタートする、エシカルな上勝での1日。

---fadeinpager---

温もりあふれる木の家で、上勝の静かな朝を楽しむ。

ホテルの部屋は全室木造2階建てのメゾネット。目の前には美しいマウンテンビューが広がる。目覚めたら、まずはテラスに出て上勝のきれいな空気を胸いっぱいに吸い込みたい。8時30分になると、曲げわっぱの弁当箱に入った朝食が運ばれてくる。クラフトビールの醸造カスを使ったグラノーラなど、フードロスにも配慮したメニューが興味深い。

天井まで届くリユース窓。

粉々で商品にならない上勝晩茶をグラノーラに混ぜたり、上勝の名産で幻の柑橘と呼ばれる柚香（ゆこう）の皮をマヨネーズの香り付けにしたり。朝食にもエシカルな工夫がいっぱい！

2階のロフトには、古いデニムをパッチワークで繋ぎ合わせたラグが。就寝時はここに布団を敷いて眠る。

木の温もりを感じる部屋。かつては林業で栄えた上勝町だが、いまは荒れた杉林が残る。その杉を活用し、ツリーハウスのような内装に。中央の柱は枝付きの檜をそのまま生かした。

ゴミ捨て場に咲く一輪の花をイメージして作られた円形の宿泊棟。1室最大4名まで泊まれる。

---fadeinpager---
製材所跡を再生した、クラフトビールの工場を見学。

町の活性化の一端を担う上勝ビールの第2工場は、予約に応じて見学を受け付け。イギリス現代美術界の権威であるターナー賞を建築物で初めて受賞したデザイン集団アセンブルが手がけており、古い製材所の雰囲気を残した造りが自慢だ。上勝名産の柚香を使ったクラフトビールの試飲も可能。

ブルーの塔は、徳島で盛んな藍染めを駆使。

塔の内部はテイスティングサロン。囲炉裏は町民の手作り、木の椅子は上勝町の大工の手ほどきを受けてアセンブルが自作した。

ビールの原料となる麦を味見できる。新鮮な麦には甘味と香りがある。

特注したポートランド製のタンクを使用。清流勝浦川から引いたおいしい水で作るクラフトビールは格別。

---fadeinpager---
ゴミゼロ施設の原点でもある、小さなブルワリーでランチ。

2015年に、ワイの建物のプロトタイプとして造られたマイクロブルワリー。オーナーは徳島で菌を扱う検査会社。上勝の町おこしを考えた末、菌を発酵させる技術ならあると量り売りの地ビールに辿り着いた。外から覗ける小さな第1工場の向かいには、レストラン兼ジェネラルストアも併設。気持ちのいいテラス席ではバーベキューも楽しめる。

空き瓶からなる色とりどりのシャンデリアがきれい。廃校になった小学校や古い郵便局の窓が使われているのを見て、昔を懐かしむ町民も。ゴミを減らすため、基本はマイボトル推奨の量り売りスタイル。上勝晩茶やサツマイモチップスも販売。

外観もワイと同じ赤レンガ色。

上勝ビールは全8種類前後。一番人気は、柚香の果汁たっぷりの爽やかなモーニング・サマー。麦の濃い甘味を味わえるペールエールや、愛媛の甘夏を使ったラガービールなども。定番銘柄を揃えたビール6本セット¥4,290ほか。

---fadeinpager---

目指すはみんなの道しるべ、町民に愛されるエコカフェへ。

午後は町内の温泉集落でティータイムを。町のランドマークやエコライフの道しるべになればと、北ポールスター極星を店名に掲げたこのカフェ。エシカルグッズや中古絵本が買えるだけでなく、カフェが主宰する町民体験プログラムについて知るなど、ゼロ・ウェイストの画期的なアイデアに触れられる。

月～水曜の15時から17時は、「空（から）の間」と題したシェアスペースに変身。ゴミだけでなく、時間や空間の無駄もゼロに。

カウンターでは自家製スコーンやクッキーの量り売りを行う。上勝野菜たっぷりの日替わりランチも人気。

昨年7月から、英語の“I know”と「帰ろう」を意味する徳島弁「いのう」をかけた滞在型プログラムを始動。上勝町の1棟貸し民家に2週間住み込み、ゴミを出さない町民の暮らしを実践してみようという新しい企画。プログラム参加者の撮影によるINOW オリジナルポストカード各¥150

ヘルシー食材を使った焼き菓子。香ばしい「エゴマのフロランタン」やほんのり甘い「ビーツクッキー」1個¥20

ユズとダイダイの自然交配から生まれたとされる柚香は、その80%を上勝で生産。さっぱりとした後味の「ゆこうのメレンゲタルトレット」¥680、疲れが癒える「ホットゆこう」¥550

土に還る商品に注目。上勝町の杉で作った、速乾性の高いキノフ ハンドタオル各¥1,100

食器洗いにも便利なヘチマたわし ¥5/㎝、スゲという植物を使ったストロー各¥10

四国いち小さな町で、エシカルに過ごす旅。

●掲載店の営業時間、定休日、価格などは、取材時から変更になる可能性があります。
●宿泊料金、滞在プランは、客室タイプ、時季、サービス内容で異なるため、予約時に宿泊施設にご確認ください。

＊『フィガロジャポン』2020年11月号より抜粋